小説・文学系の話題が主。ときに自作を載っけたりもする予定。ときにリアル話題。

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 食堂。放課後になって、野球の練習も済ませたぼくたちは、それぞれの用事を済ませるにつれ、ちょっと早いが食堂に集まりつつあった。


 ぼくの隣に真人が座り、対面に小毬さんがお菓子を持って座っている。
 彼女があんまりにも美味しそうにお菓子を食べているので(さすがに夕食前のお菓子はどうかと思うが)、小腹の空いたぼくと真人はじっと彼女の様子を見つめていた。
「あ、理樹くんと真人くんの分もあるよ~?」
「あ、いや、ぼくは……」
 遠慮しようと思ったのだが、
「え、いいのかよ?」真人はすんなりもらっている。
腹が減って仕方ないんだろう。
「いや~、悪いね~。これからカツが待ってるってのに、他のやつらが待ちきれなくってよ。そんじゃ、いただきますよっと……」
 クッキーを一つ、二つ、とつまんでいく。
「くぅ~……うんめぇ~っ!」
 こうして大の男が、小毬さんのような可愛らしい女の子の前で手作り(?)らしいお菓子を頬張っているのは、なんだかおかしいような、へんてこな感じがする。
「やっぱ菓子はいいよな! カツに似てるしよっ!」
「似てないよ……」
「文字だけだね~」
 さすがの小毬さんもちょっと引いている。
「よう。理樹、真人」
 謙吾の声がする。部活が終わったんだろうか。「あ、神北もいるじゃないか」
 そうして彼は小毬さんの隣へと座る。シャワーを浴びたんだろう。すこし湯気が立っていて、清潔そうな良い石鹸の香りがする。
「まだ他のやつらは来てないんだな? あー、疲れた疲れた」
「もう頼んじゃう? どうせ恭介とか鈴たちは用事があって遅れるって言ってたし」
「ん? そうなのか? あ、いや待て……」
「どうしたの?」
 謙吾はじいっと真人の持っているお菓子を見つめている。
「いい。おい真人。おいしそうなもの食べているじゃないか。神北が作ったのか?」
「あ、うん~。謙吾くんも食べる?」
「いただこう……」
 だが真人がすごい勢いでさっきから食べていたため、最後の一枚になってしまっていた。
 それを悟るやいなや、謙吾はさっと手を伸ばし、真人の手をはたいて、手に持っていたクッキーをかすめ取った。……
「……ふむ。なかなかいけるな。洋菓子か。あまりこういったものは好かんのだが、悪くない……」
「おいこら……てめぇ!」
 すっくと立ち上がる。
「オレのもんだったのを、てめぇ、横取りしやがって! 勝負しろやコラァ!」
「ふん……」
 ええー……。
 そもそも、これは小毬さんのだし、たかが一枚のクッキーでまたバトルとか……。
 高校生にもなって、なんてみみっちい……。
「貴様が過剰に食っていたから、これは横取りではない。そもそも小毬は俺に食べさせてくれたのだ。それをおまえが横取りしようとしたのではないか」
「うるっせぇ! このエセ剣士が! 洋菓子食ってんじゃねぇぞ!」
 出た、真人の明後日の方向にケチつける術。意味がわかんない。
「特段問題なかろう……俺は小毬のお菓子なら何でもいける……それが洋菓子だろうと、綿飴だろうとな!」
 こっちも意味がわからない。
「貴様のようにお菓子なら何でもクジラのように吸引してのけようとする神経の男に、味の楽しみなどわかるかっ!」
「言ったなてめぇ……」
「ふん。やるのか?」
「いいぜ? 食前の軽い運動だ……てめぇをボコボコにして、いいカツ食ってやんよ……!」
「貴様をミンチにして、ひき肉ソースにしてやるわっ!」
「うるっせぇ――――っ!」
 うわっ! 危ない!
 真人は椅子からひとっ飛びに跳躍し、謙吾に跳び蹴りを放つ。
 謙吾はそれを竹刀でかわし、一旦真人との間合いを計ってから、
「メェ――――ンッ!」
 と一息に竹刀を振った。
 男らしくもそれを両腕で食い止めた真人は、そのまま突進して、謙吾を竹刀ごと吹っ飛ばした。
 うわぁ……どうしよう……!
 恭介がいないのにケンカを始めちゃったよ!
 ぼくなんかじゃ止め方がわからないし、鈴もいないしなぁ……。
「オーラオラオラオラオラッ!」
 壁に追いつめたのをいいことに、真人は謙吾の胴体や顔に向かって乱打をおみまいする。
 しかし謙吾は戦闘のセンスは申し分なく、相手に打たせるだけ打たせておいて、疲れた瞬間に反撃に出るすべを心得ていた。真人の乱打をすべてガードしてから、竹刀の柄で脇腹を突き、真人がよろめいたところに今度は剣の切っ先を肩部分に突き刺した。
 まあ……それでKO。
 ただ謙吾の消耗も半端じゃなかったから、引き分けというところかな……。
 勝負を終えてずこずこと戻ってくる二人を、やや疲れたぼくと、怒った小毬さんが待っていた。
「も――っ!」
 と、頬を膨らませて二人を見据える小毬さん。
 対して大の男二人は、予想していなかったのか、縮み上がっている。
「だめだよ、喧嘩しちゃ! お菓子ならまだちゃ~んとあるんだから!」
「いや、でもよぅ……」
「俺は勝負などする気はなかったのだ。こいつがさもしい根性を……」
「しゃ~らっぷ!」
「ハッ……」
「はいぃ!」
 眉をつり上げた小毬さんに、みっちり説教を食らっている大の男二人。
 そんな彼らを眺めている間に、西園さんやクドが食堂へやって来た。
「そんなに喧嘩する人たちには、お菓子あげませんっ!」
「ええ~……っ!」
「そんな、神北。これはただのお遊びというやつで……」
「もう決めたもん! 謙吾くんにもあげないし、もう作らないから」
 西園さんがぼくの隣に立って、首を傾げながら、
「どうかしたんですか?」
「いや、ちょっとね……」
 謙吾はよっぽど小毬さんが怖かったのか、両手をついて謝り出す始末。
 そんなにお菓子が欲しいのか……。
「わ、悪かったよ小毬! オレら、もう菓子のことで喧嘩なんかしねぇからよ!」
「……ほんと?」
「お、おう! な、謙吾? オレら仲良くやろうぜ! な?」
「あ、ああ! さっきは叩いて悪かったな真人! 痛かったろう?」
「い、いいやぜんぜん! こ、これくらいは痛くしねぇとよ……」
「そ、そうか? ぐぬぬぬぬぬ……まだまだ……」
 二人は握手しているように見せて、ぐりぐりぐり、と力比べをまだ続けている。
「う~ん……それじゃあ、」
「ちょ、ちょっと待った神北! これはべつに喧嘩しているわけじゃあ……」
「おうそうだぜ! 仲直りの証だよ! なぁ……謙吾……?」
「おう……この筋肉ダルマが……早く降参しろっ……」
「うるせぇこの野郎……ぐうううぬぬぬぬ……」
 まだまだ喧嘩する気が見え見えの二人をよそに、小毬さんは始末がついたと思ったのか、ぱっと可愛い笑顔になって、
「じゃ、それならまた作って来てあげるね!」
 と嬉しそうに言うので、大の男二人はようやく喧嘩する気をなくして、ほっと一息ついたのだった。
「あ、そうだ~!」
 と思いついたように言うので、二人はぎょっとしつつ、
「新しいお菓子に挑戦しようと思ってたのです……ねえ二人とも?」
「お、おうっ!?」
「何だ?」
「よかったら、味見してくれる……?」
「お、おう! それくれぇのことなら、この筋肉さんに任せな!」
「新感覚の味、待っているぞ!」
 予想よりも良い反応が返ってきたと解釈したのか、小毬さんはさらに目を輝かせて、
「あ、じゃあね~……一緒に作ってみる? お菓子」
 とのたまった。
 大男二人の目は点となった。
「謙吾くん、和菓子が好きだって言ってたよね? 和菓子ってわたしも大好きだけど、作ったことなくって……あと真人くんも、どんなクッキーが好きなのか詳しく教えて欲しいな……そういうわけで~、明日の放課後、家庭科室に集合ね? はい決まり!」
 二人の顔がなんだかぼやけ始めたように見えた……。
「な、なんだとぅ…………?」
「俺は部活があるのに……」
 いやまあ。
「やべぇ、どうしよう……今度逆らったら、マジで菓子をもらえなくなるかもしんねぇ……」
「おまえは良いではないか。俺など和菓子作りをやらされるんだぞ……? 正直作り方など知るわけがなかろう……レシピなど持ってこいと言われても……」
「どうしたの? 二人とも?」
 小毬さんが、二人の顔を覗き込む。
「い、いやぁ! なんでもねぇよ!」
「そ、そうだ! 気にするな! ……いや、まずは親父とおふくろに電話だ。すぐにレシピを用意してくれるよう、頼まねば……明日の朝それを取りに行くとして……朝練は……」
「??」
 小毬さん最強伝説……。
 西園さんとクドは意味がわからなさそうにしていたが、ぼくとしては、怖すぎるくらい、彼女の真の強さを知ってしまったのだった……。
 
 おわり
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2014.11.29 / Top↑
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